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*ハジメマシテの方は「分類棚:地球儀」からお読み下さい。

02.03 Scene Collection:蒼義哲学葵の思考回路 を更新
04.19 Scene Collection:儚い想い短い休息 を更新
04.19  Scene Collection : わがままシオン を更新

SC3 : 蒼義哲学

+帝15の頃+


「あおぎ、美しいものは美しいとかって、誰か言ったかな。」
「あ。ぁあ私・・かな。」
九龍を一望できる崖の縁に隣り合って座ったふたり。平穏に肩を並べてい
るが、彼らの同級生辺りをはじめ一般人が見たら腰を抜かしそうなぐらいにえげつない
光景だ。帝国最強のライバル同士・・・第4皇子、皇祇帝と、この国の次代総将軍
との噂も高い篁蒼義。 でも彼ら実は、恋人同士。
「ぁあ綺麗な国!われらが九龍の地には、赤い夕日が最高に似合うv」
「お前のクニ・・・ってかい? ・・・綺麗なのは誰だよ。まったく…」
「ふふ… 違うわv ”我々の”…よ、帝。」
美しい我々の美しい九龍…と囁いて蒼義は帝との間の3cmをまた詰めた。
2人の後姿は兄弟のように似ている。長い黒髪、まだ15の帝の身体は華奢で、左に
並んだ蒼義と肩幅も大して変わらないから。
「みか…ど、ちょっと失礼、」
「ぁ!…」
突然、無駄なくしなやかに鍛えられた彼女の左腕が帝の前に伸ばされたかと思うと、
多少無理やり蒼義のほうを向かされる。



そして不意の口付け。



「・・・いや、あお、今のナンデスカ!?」
「真に強い人間は、そして自分がただの人間に過ぎないということを知るの。」
「はぁ?」
「あなたにキスしたかったの。それだけ。嫌じゃなかったでしょ。」
「んな...!俺を練習台にするなよ…」
慌てた帝と対象的に平然と彼を見つめる蒼義。
「練習台だなんて。自分を卑下するのはおやめなさいな。」
「人がどんなに私やあなたのことを強いといっても、人並みはずれた存在だと言っても、
神格化したり、毛嫌いしたり…色々しても、私達は私達でしかない。」
無敵の戦姫の不敵な微笑。帝の心をもうずっと奪ってきたその微笑み。
「勝手にしたけど、私は口付けの意味を考えただけ。だってね、同じことをして男達を
惑わす者も、媚びて寵愛と金とをを請う者もいるのよ。でも、そんなの私は嫌だ。」
蒼義はこうやって、時々勝手に独り言のような言葉をつむぐ。
「あなたは私と対等でいてくれるから、この世界で私は神の次にあなたを愛す。ねぇ、
帝。例えば力をこめて無に向かって精霊を撃ったって空しいのよ。」
言いながらとんとん…と帝の背を叩くと、彼の肩を支えにして立ち上がる。風を受けて
はためく衣の裾。目をとじて空を仰ぐ彼女の姿、まるで女神のようだと帝は思う。
「こうやってわが身を抱きしめたって空しいのよ。どんなに強くたって、同じだけの力で向
かって来てくれるものがあってこそ幸せに生きられるのだと、知っているだけなのよ。」
「あおぎ…!」
自分の身体を抱く彼女がなんだか突然悲しそうに見えて、帝は慌てて自分も立ち上がった。
「・・・・!」
そして、またも不意を突かれて抱きしめられる。…だから出来るだけやさしく抱きしめ返す。
蒼義が小さく笑う。
「みか、 私は結局ただの人間に過ぎない。」
そして、苦笑する。
「あなたが、居てくれて、ありがとう。 抱きしめたら同じ力で抱きしめ返してくれて、ありがとう。
本気で私に向かってきてくれて、ありがとう。だから私はここに存在できる。」
そしてまた、みか…と呼ぶ。
「美しいものは美しい、の続き、覚えているかしら?」
帝は首を横に振る。
「”だから、愛しいものは手放すな”・・・よ。」
今度は帝が苦笑する番だった。少し前は不可解だったけれど、これは蒼義流の要求。
両の掌で彼女の頬をはさんで、とん…と額を合わせる。
「俺はあおをいつか越えるよ。」
「私もみかを追い抜き返す。」
こんなに近い距離。こんなに愛しい人。
対の魂をもとめ合う…最強の2人の繊細な関係。


「君の魂に永久の口付けを。」
輝き始めた星の下。

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