「なあ、おい…」
「あぁ。…ミカド様が…」
「なん…なんだ?」
シオンの何をし始めるか解らない恐ろしさに戦々恐々としていた護衛官達はふと気づく。
「あにうえー…後で夜桜を肴に一杯ということで手を打たない?
「…おまえな……、」
「アオギも呼ぶよ?」
遠巻きにして二人を見守る護衛官達には会話の内容までは聞こえてこない。しかしその二人。ただ並び立っているよう
見えるがなにか違う。
「御前会議などお前が居れば十分だ。」
「や、でも今日のは居住区の各管轄についての話しだからシオンにぃもいないと。」
「…ふん」
「わ!凄い嫌そうな顔!!!」
方や漆黒の皇子シオン、そしてあどけなさが残るミカド。
「ミカド様はまだ15にもお成りではないと聞き知るが…」
「いやーしかしあの立ち居振舞いと言おうか、存在感は…」
かなり重い護衛官の飾り甲冑の下で汗が伝い落ちるのがわかる。
時々に苦笑いしつつこちらを振り返って相づちを求める仕草が不似合いに思われるほどの…
「き…筋肉が引き締まるようだ…」
「圧倒的な…気迫…と言っても談笑なされているだけなのだが…」
「しかしこれは…この…生命を支配されるかのような感覚は、」
「は…ぁ恐るべしっっ…っ!」
正に生まれついての覇者!みたいな流れで一同わけも分からず感動しているのに気づいたのは、シオン…。
「ミカドや、おまえな、半径10メートル内に殺気を撒き散らしながら歩くのはどうなんだ」
「え?」
「(無自覚かよ…よほどタチが悪いな)」
「え。 俺!?」
「…別に問題ない。 私には無害だし。」
「あ、うん(?) ね、シオンにぃ、遅くなるよ。行こうよ」
ミカドのやや細身な腕に背を押されて渋々桜を諦めるシオン。
もはや「この命あなた様の為に賭してついて参ります」的な力の入れ方で猛然とついてくる護衛官一同。
そんな状況に実は気づいていないわけではないミカド。
ある日のひとこま 。
桜木に覆われた幻。